銅版画のマチエール美術出版社駒井哲郎関係の古本買取いたします

愛書館中川書房では、『銅版画のマチエール』（美術出版社）ほか駒井哲郎関係の古書を買取りしております。

書名：銅版画のマチエール
著者：駒井哲郎
出版社：美術出版社
発行年：昭和56年（1981）発行

銅版画とは銅板を版材とし、版の凹部で図柄を構成する凹版画の一種です。凹版画は版全体にインクを乗せてから布などで拭き、凹部にのみインクを残して紙を重ねて圧をかけます。凹部の作り方は版に直接刻む直接法と酸の浸食を利用する間接法の2種類があり、エングレービング、ドライポイント、メゾチントなどの直接法やエッチング、アクアチントなどの間接法を一つまたは複数用いて製版されます。江戸時代の日本で盛んに刷られた浮世絵は木版画の一種であり、日本では永きにわたり木版画が主流でしたが、西洋では木版画より繊細な描写が出来る技法として、写真製版ができるまでのあいだもっとも有力な印刷手段として発展しました。

駒井哲郎の銅版画や作品集は蒐集家の方から人気です

『銅版画のマチエール』の著者である駒井哲郎は日本において印刷技法として認知されていた銅版画を芸術作品として普及させ、地位の向上に貢献した作家として評価されている画家です。15歳のときに雑誌『エッチング』に掲載されていたジャン＝フランソワ・ミレーの版画をきっかけに銅版画に興味を持ち、西田武雄に師事して銅版画技法を学び、東京美術学校（現在の東京藝術大学）の西洋画科を卒業しています。様々な賞を受賞し、個展を開催、関野準一郎や浜口陽三といった同時代の版画家たちと日本銅版画協会結成したのちはパリへ留学して技法を学び、帰国後は東京藝術大学の講師を経て教授に就任しました。
駒井哲郎の作品は写実的な風景描写だけでなく幻想的な作品も生み出すなど多彩な表現が特徴であり、代表作には「束の間の幻影」「夢の扉」「孤独な鳥」「ある空虚」「森の中の空地」などがあります。なお、抽象的・幻想的な作風の背景にはパウル・クレー、写実的な描写にはオディロン・ルドンの影響があります。作品集としては生前に刊行された美術出版社の『駒井哲郎銅版画作品集』のほか『駒井哲郎の銅版画』『駒井哲郎日本現代版画』などがあり、著作には『銅版画のマチエール』のほか『白と黒の造形』『駒井哲郎ブックワーク』『沈黙の雄弁』などがあります。世田谷美術館（世田谷区砧公園）には「束の間の幻影」「孤独な鳥」「河岸」「樹木ルドンの素描により」「ある空虚」「黄色い家」「Petiti Jardin（小さな庭）」「平原」「帽子とビン」「花と果実」など実業家である福原義春が蒐集していた約500点に及ぶ駒井哲郎の作品が収蔵されており、2012年にはその寄贈を受けて「福原コレクション駒井哲郎1920-1976」展が開催されました。
また駒井哲郎は文学者との交流も多いのも特徴であり、安東次男の詩集『人それを呼んで反歌という』（非売品、限定8部）や金子光晴の詩集『よごれてゐない一日』（限定99部）、『丸山薫詩集蟻のいる顔』『福永武彦詩集全3冊』（限定50部）など数多くの文学作品の銅版画を手掛けています。なかでも安東次男との詩画集『からんどりえ』は版画と詩を同じ紙に刷るという日本で初めての試みがされた詩画集として有名です。

『銅版画のマチエール』には、その名の通り銅版画におけるマチエール（素材や材質によって作り出される美術的な効果）を中心に記されています。銅版画を制作するにあたっての材料・道具、製版や印刷について、製版法の種類と道具・技法の一覧表とともに学ぶことができます。また銅版画の起源についても記されているほか、「バベルの塔」で有名なピーテル・ブリューゲル、腐食銅版画(エッチング)の技法に新境地を開いたジャック・カロ、連作集『パリの銅版画』で知られるシャルル・メリヨン、放浪の画家ロドルフ・ブレダン、ブレダンの弟子であり幻想の世界を描き続けたオディロン・ルドン、古い版画技法「メゾチント」を復活させた長谷川潔など、著名な銅版画家たちについても詳細に語られた1冊です。

銅版画・版画など美術に関する古本の買取強化中！

愛書館中川書房では銅版画・版画など美術に関する古本の出張買取も承っております。『曇後晴浜田知明銅版画集』『地上の祭武井武雄版画絵本』などの限定版の画集、ジョルジュ・ビゴー『クロッキー・ジャポネ』や渡辺幽香『版画集大日本風俗漫画』など明治・大正時代など古い年代に発行された作品集、『明治版画史』『日本銅版画志』などの銅板画に関する研究書をお持ちでしたらお気軽にご相談ください。
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カテゴリ：取扱書籍 > 美術・建築・写真など