東京都八王子市にて展覧会「八王子市市制100周年記念事業没後30年銅版画家清原啓子」が開催中です。

11月11日（土）より八王子市夢美術館（東京都八王子市）にて「八王子市市制100周年記念事業没後30年銅版画家清原啓子」が開催されています。

八王子市市制100周年記念事業没後30年銅版画家清原啓子

会場：八王子市夢美術館（東京都八王子市八日町8番1号ビュータワー八王子2F）
会期：11月11日（土）～12月14日（木）
休館日：月曜日
開館時間：10:00～19:00（最終入館は閉館の30分前まで）
入館料：一般600円　小学生以上・65歳以上300円　未就学児無料
※土曜日は小・中学生無料

清原啓子（1955-1987）は東京都八王子市出身の銅版画家です。多摩美術大学絵画科への入学後まもなくに制作された第一作「鳥の目のレンズ」は日本における戦後銅版画の第一人者のひとりであり多摩美術大学の教授であった深沢幸雄を仰天させ、以後は彼に師事して銅版画を学びました。昭和55年（1980）頃から清原啓子の作品は完成期に入り「雨期」「後日譚」などの作品を制作、そして昭和57年（1982）にはのちに代表作となる「領土」を制作して日本版画協会賞を受賞しました。翌年には東京銀座にある番町画廊（現在は横浜市青葉区に移転）で初の個展を開催し、黙々と巨万の点を打ち、巨万の線を引くという緻密な技法で作られた幻想的な世界の作品は多くの賞賛を受けます。そうして清原啓子の将来にも期待が集まりましたが、昭和62年（1987）7月に心不全によって31歳という若さで亡くなりました。
清原啓子が版画家として活動したのは学生時代を含めても10年に満たず、その作品は30点しか残っていません。しかし神秘的、耽美的な「物語性」にこだわった特異な幻想性と緻密な技法で作られた作品は没後30年経った今でも根強い人気があります。清原啓子は幻視的・神秘的な文学者や思想家を好んでおり、久生十蘭、三島由紀夫、埴谷雄高、シャルル・ボードレール、フリードリヒ・ニーチェ、ガストン・バシュラールなどの作家・思想家に傾倒していました。また、ヒエロニムス・ボス、ジャック・カロ、シャルル・メリヨン、ギュスターヴ・モロー、ロドルフ・ブレダン、オディロン・ルドン、伊藤若冲などの画家を敬愛していました。現在、清原啓子の銅版画や素描などの作品は山梨県立美術館、町田市立国際版画美術館、八王子市夢美術館などに収蔵されています。

清原啓子が影響を受けたヨーロッパの画家の作品も展示されています

「八王子市市制100周年記念事業没後30年銅版画家清原啓子」では夭折の銅版画家として語られる清原啓子が制作した全ての銅版画、銅板の原版、下絵となった素描、最後の完成作となった「孤島」の制作過程を知ることのできる試刷り、制作ノートなど、未発表を含む様々な資料が展示されています。また、彼女が影響を受けたジャック・カロ「聖アントニウスの誘惑」、ギュスターヴ・モロー「救済される聖セバスティアヌス」、ロドルフ・ブレスダン「死の喜劇」、オディロン・ルドン『聖アントワーヌの誘惑』第一集 Ⅸ「いたるところで瞳が焔をはく」などヨーロッパの画家・版画家の作品も展示され、それらの作品から、清原啓子の制作の源泉やその全貌に迫っています。

〈展示作品〉
清原啓子「久生十蘭に捧ぐ」「孤島」「後日談」「Dの頭文字」「領土」「魔都夢譚」
ジャック・カロ「聖アントニウスの誘惑」
オディロン・ルドン『聖アントワーヌの誘惑』第一集 Ⅸ「いたるところで瞳が焔をはく」
ギュスターヴ・モロー「救済される聖セバスティアヌス」　ほか

また、この展覧会に合わせて八王子市夢美術館が監修した『銅版画家清原啓子作品集増補新版』が発売されました。本書は2014年に清原啓子の銅版画30点、素描の下絵、未完成作品を収録して刊行された『銅版画家清原啓子作品集』の増補新版です。新たに発見された素描や詳細な年譜、銅版画の制作工程を記したノートなどが加えられており、銅版画30点、素描19点、スケッチ・未完成作18点、詩篇、解説、年譜、文献、蔵書リストが収録されています。

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