創作版画家・小野忠重ほか木版画作品・古本を出張買取いたします

愛書館中川書房では、小野忠重ほか創作版画運動で活躍した版画家の木版画作品、画集・作品集・版画雑誌・評伝・研究書といった関連書籍の古本を買取りしております。

小野忠重創作版画

小野忠重の創作版画と一緒に買取りさせていただいた作品や古本については「『新版画藤牧義夫特集号』ほか創作版画(木版画)の古書を出張買取」にてご紹介しております。

小野忠重ほか創作版画家の作品、画集・作品集といった古本は愛好家や蒐集家から好まれます

明治時代末期から昭和時代にかけて、日本では「創作版画運動」と呼ばれる芸術運動が起こりました。これは明治時代初期から中期にかけて注目された「複製技術としての版画」ではなく、「芸術の一分野としての版画」を唱えた運動です。作者自らが下絵を描き、版木を彫り、紙に摺る、いわゆる「自画自刻自摺」が標語として掲げられました。
なお江戸時代に誕生した浮世絵（錦絵）、創作版画と同年代に誕生した新版画においては絵師・彫師・摺師による分業体制で作品制作が行われたため、その点において創作版画とは異なります。

小野忠重は浮世絵・版画・古地図・洋風画の研究でも知られている版画家です。大正時代から昭和時代にかけて活躍し、昭和時代初期に創立された創作版画団体「新版画集団」「造型版画協会」の中心メンバーでもあります。
明治42年（1909）に現在の東京都墨田区で生まれた小野忠重は、実業学校に通いながら本郷絵画研究所で美術を学び、卒業後は家業の酒屋を手伝いながらプロレタリア美術展や日本版画協会展に油彩画や版画といった作品を出品しました。
小野忠重が版画に専念し始めたのは昭和4年（1930）の頃で、昭和7年（1932）に藤牧義夫・清水正博・松下義雄といった版画仲間22名とともに「新版画集団」を創立します。新版画集団は「版画の大衆化」を唱えた団体であり、労働者や農民をテーマとしたプロレタリア美術運動とも繋がっています。特に小野忠重は労働者や都市風景、工場といった庶民の生活に密着した作品を描きました。
しかし、昭和10年（1935）9月の藤牧義夫失踪、同年12月の機関雑誌『新版画』終刊を経て、新版画集団は昭和11年（1936）に解散することになります。翌年、小野忠重が主宰となって末木東留・清水正博・柴秀夫・水船六洲の新版画集団のメンバーだった5名で創立されたのが「造形版画協会」です。その後は新制作派協会社展や型版画協会展などで精力的に作品を発表し、戦後には日本美術会アンデパンダン展や東京国際版画ビエンナーレ展などへ作品を出品しています。その業績を評価され、昭和54年（1979）には紫綬褒章を受章しました。
小野忠重の著書には、『小野忠重版画集』『小野忠重と「新版画」の作家たち展』といった画集や図録、『日本の銅版画と石版画』『新理念版画の技法』『近代日本の版画』『司馬江漢江戸の西洋画士』『江戸の洋画家』ほか技法書や研究書があります。また、版画700点、素描1500点が小野忠重版画館に所蔵されています。小野忠重版画館では年に数回企画展が開催されるほか、過去には『藤牧義夫』『小野忠重全版画』といった画集も刊行されました。